太巻きの具材として、昆布巻きを結ぶものとして・・・そんなどこか控えめな「かんぴょう」。

どんな風に作られているかご存知ですか?「かんぴょう」の生産量は国内生産シェア98%が栃木県。その内53%がここ下野市で作られています。皆さんちょっと覗いてみませんか?

取材協力:地域特産物マイスター 池田榮さんと奥様/下野かんぴょう・ふくべ振興の会の皆さん

4月:定植

苗を畑に植えていきます。保温のため株元には黒いビニールシート、さらに三角形のキャップをかぶせます。このキャップ昔は四角形だったため、つけるのも一苦労だったといいます。浅根性(せんこんせい)で横につるを伸ばしながら成長するため、畝と畝の間は広くあけて植えていきます。

5月:藁敷き

乾燥を防ぐ、雑草を生えづらくする、実を守るクッションなどその役目は様々。また同じ向きに敷き詰められています。天敵であるアブラムシ対策のための薬剤散布の際に、薬剤がしっかりと行き渡るようにするための工夫なんだとか。本葉(ほんよう)が7~8枚になり大きくなったらキャップをはずし、芯を切って脇芽を伸ばします。

6月:摘心(てきしん)

太いつるを5~6節残して先端を摘み取る「摘心」という作業を行ないます。成長を促すために必要なこの作業、つるが横に長く広がって伸びていけるようにコントロールしながら続けられます。

下旬頃には畑一面が葉で覆われるまでに成長します。

※花合わせ
その名のとおり夕方から咲き始め、日が昇るとしぼんでしまう、真っ白な「ゆうがおの花」。生産性も上がるため、夕方になると総出で雄花と雌花をあわせる「花合わせ(人工受粉)」の作業を行ないます。しかし現在は人材の確保が難しく、池田さんのところでは虫による自然交配をとっています。

成長に欠かせない雷と雨

ちょうどこの頃、下野市では夕立が多くなる時期。雨と日差しをしっかりと浴び、2週間程度で収穫をむかえます。この雨と日差しがゆうがおの成長には欠かせません。下野市は有数の雷が多い地域。恵の雨をもたらすとして「雷さま(らいさま)」と呼ばれてきました。地表を冷やし暑さに弱い根を保護し、成長に必要な水分を補給することができます。また関東ローム層(黒色の火山灰土)に覆われた土地は、水はけがよく軽い土を好むゆうがおの栽培に適しています。(出典:下野市歴史的風致維持向上計画)

7~8月:収穫

生い茂った葉をかき分けて、つるを残しながら収穫していきます。収穫するのは6~7kg程度に育った実。まだ涼しい朝の内に行ないますが重労働。この時期どんどん成長するため、最適な大きさで収穫する必要があります。

かんぴょう剥き

作業が始まるのはまだ日も昇らない3時頃。この皮むきの音がしてくると私たちは「夏が来たなぁ」と感じます。達人である池田さんは1分もかからずに剥いていますが、これもまた熟練の技術が必要です。皮の部分は固い一方、実は中央部分に種があるため境目を見極めながら剥く必要があるからです。何百個と剥かれる、ゆうがおの実。どんどん飛んでくる帯状になったゆうがおの実を奥様が素早く受け取り2mほどに揃え、ビニールハウスへと運び2本の竿にかけてすぐに干していきます。

表面は粘り気があり、くっついてしまうため、道具を使いながら剥がす「裾わけ」という作業を日中は行います。また翌日の早朝には2本の竿にかけていた「かんぴょう」を1本の竿にかける「竿まわし」という作業を行います。夜との気温差で湿気を含み剥がしやすくなるためです。そして、さらに乾燥。以前は天日干しでしたが、現在は多くの生産者が天候に左右されないビニールハウス内で時には送風機やボイラーを使いながら乾燥させていきます。池田さんの作られている「無漂白かんぴょう」は二酸化硫黄で燻蒸(くんじょう)しないため、よりしっかりと乾燥させ酸化を防ぐ必要があります。カラカラの状態で水分量は何と10%程度。市場に出回る「かんぴょう」の多くは乾燥させたのちに、保存性の高い硫黄燻蒸したもので水分量は25%以上と大きく異なります。

こうして乾燥から選別・袋詰めをへて出荷され皆さんの食卓へと並んでいきます。貴重な「無漂白かんぴょう」はきちんと結ぶことができ、煮上がりもふっくらとし、味もしみ込みやすいことから料亭などに販売されていきます。「無漂白かんぴょう」を見かけた際にはぜひご賞味ください。水で戻すだけで使うことができ、とってもおすすめです。

苗作りから収穫、出荷までに約半年がかりで出来上がる「かんぴょう」は1玉からわずか数百グラム。さらに最も手間のかかる作業が暑い夏の時期。生産量日本一であるものの生産量は年々減少傾向、生産者の高齢化が進んでいます。しかし一方では、地元小学校で「ふくべ細工」作りに挑戦するなど食にとどまらない活動も進められています。下野市ならではのこの文化が次の100年まで続いていくことを願って、プチハピしもつけではこれからも発信していきます。

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簡単!おすすめかんぴょう料理

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