イベント・レポートVol.2 なにもない街からはじまる共創の旅

※ツアー1日目のレポートはこちらをご覧ください。

【ツアー2日目】
わたしが下野市の未来を担う一員になった日。まちづくり活動の一部を実際に体験してきた。

ツアー初日から2週間の期間を空けて実施された2日目。この日は2チームに分かれ、下野市で立ち上がったばかりの二つの地域プロジェクトに携わることに。実際の地域のプレイヤーに交じってプロジェクトに参画し、頭をひねったり汗を流したりなど、それぞれに課されたミッションに挑戦 してきました!

ひとつめのミッションは「空き店舗をDIYして、地域の拠点をみんなでつくる」こと、もうひとつは「若者と地域を繋ぐニュープロジェクトについて考える」ことです。

わたしは前者の方へ参加してきたので、今回はそちらの方をメインにレポートします!

地域の人と人がつながる場所をつくる。シェアスペース「WEL」の挑戦。

「ツアータイトルに『なにもない街から』とありますが、下野市って本当に何もない街だと思いますか」そんな問いを投げかけられ、はじまった2日目でした。

今日のプロジェクトを進行してくれるのは下野市石橋生まれで在住のローカルプロデューサー・山口貴明さん。建築士の視点からまちづくりを盛り上げている、下野市の創生事業の第一人者とも言える方です。

先の問いに対して、横に首を振る参加者たち。「そうですね、僕もそう思います。」と山口さん。

かつて会社員だった山口さんがまちづくりを始めたキッカケは「退屈でつまらない下野を、もっと自分が楽しめるようにしたい」という純粋な気持ちからでした。そこから下野市内を巻き込みながらたくさんのイベントやコミュニティを企画していきます。

マルシェを開催したり、地域の若者組織を再編したり。初日で巡ってきた「天平の丘公園」や「吉田村ビレッジ」も、下野市を生まれ変わらせようと企画した事業のひとつだそうです。

しかし、地方創生を進めていくにあたって課題は無限に存在しました。地域の無関心、やりっぱなしの行政、頼りっぱなしの民間。著しい少子高齢化に直面し、人口減少や経済縮小が進む社会の一方、多様化していく価値観。

叶えたい願いの前に立ちはだかる多様な課題。それらを越えるために、山口さんは地域の内外で、ともに考え、ともに実行していくことのできる仲間を集めることにしました。

そして、その地域内外の仲間が集える場所を作りたい、という願いから今回のプロジェクトは始まりました。具体的には、住み続けたい・関わり続けたいと思える地域を目指し、地域の主役となる人を育むローカルコミュニティとなる拠点を作ることです。拠点の名前は「WEL」といいます。

石橋高校の近くにあるこの場所は、進路を決める大切な時期である高校生のサードプレイスになったり、地域の人同士の交流拠点になったり、下野市に住む大人のセカンドキャリアを応援する場所になったりするそうです。なんて素敵な場所!

拠点「WEL」の現在の外観。ここからDIYを繰り返して形にしていく
この日はテイクアウトランチで「親子丼」か「カツ丼」を選ぶ形式。どちらも美味しそう…

さて、今回のミッションは「空き店舗をDIYして、地域の拠点をみんなでつくる」こと。ランチを終えたら早速DIYの作業に取り組んでいきます。

DIYというのは「Do It Yourself」の略語で、直訳すると「自分がやる」という意味の言葉です。DIYの魅力は実は作り上げたモノ自体にはなく、自分で何かを作り上げることで得られる達成感や満足感だ、と言う山口さん。ということで今日は、自分で手を動かすことで生まれるクリエイティビティを楽しんでいこうと思います!

参加者たちが取り組むのは拠点づくりの基礎となる大切な工程「塗装」。かつて栄えていたこのまちにある見た目や柄が古くなって使われないモノたちに、改めていまふうな塗装を施して再び命を吹き込む作業です。

さてここからは、作業の様子を写真と共にお送りします。

今回塗っていくものたち。枠部分にご注目!
どんな変化をするのか楽しみ!
今回使用した水性塗料です。真っ黒…!

塗装には市販の黒い水性塗料を使用します。この塗料はアイアン風の家具や雑貨へのリメイクによく用いられ、塗るだけで少しざらざらとした金属のような質感になることが特徴。これを、ホワイトボードの枠組みや自立式ライト、書類カゴなどにどんどん塗っていきます。

果たしてプラスチックには綺麗に水性塗料を塗ることはできるのか、陶器には塗れるのか、ライトの隙間はどうするのか、など実際に塗っていきながらモノの質感を自分たちで確認し、試行錯誤を繰り返していきます。

「ここどうしよう?」と、参加者同士会話しながら試行錯誤を繰り返します

塗っている最中は、参加者や地域のプレイヤーで会話が弾んだり、もしくは細かい作業の時は自分の世界に入って一点に集中したり。日頃あまり使用しない感性が刺激されていき、塗装を重ねるにつれて完成品がどうなるのかどんどんワクワクする気持ちが高まりました。

塗料を塗る前にきちんと汚れを落とすことが大切!
水性塗料の前にニスを塗っている様子
繊細なパーツも丁寧に塗っていきます。真剣!
この日は天気が良く外で作業しました。空気もおいしくて、たのしい!
実際に黒い水性塗料を塗っていきます。なかなかうまく付かず苦戦中…
作業後半になり、全員が職人のような顔つきになってきました(笑)
棚の裏面まで塗るこだわりっぷり。さすがです…!

そして、長い時間をかけて完成したものがこちら!

それぞれ白かった枠部分が黒くなりました。変化は一目瞭然!
この光沢がカッコイイ!
ピカピカで真っ白だった花瓶もシックな雰囲気に

自分たちで作りあげたインテリアたちを「かっこいい!」「わたしもそれ欲しい!」と他の人に褒めてもらえることは想像以上に誇らしく、なんだかあたらしい自分に出会えた気がしました。これも DIYのひとつの醍醐味なのかもしれません。

自分で塗装したインテリアはつい持ち帰りたくなってしまうほど愛おしく、たまに下野までこのインテリアが使われている様子を見に来たいな、なんて思ってしまうほどでした。

迷いがちな高校生の進路。高校生と大人が対話する機会を提供するイベント。

高校生と正しい対話をするために話し合いをしている様子
自分がどのような人間なのか、要素を付箋に書き出してみます
ひとりずつ集中して作業する時間。自分の心と対話します

ワークシートを用いて、高校生と対話をしていきます。「いま、学校はたのしい?」「自分ってどんなひと?」「家族の中での立ち位置は?」などの質問事項が書かれています。

対話するときも、大人側から決して明確な答えを与えてはダメ、という安心ルール付き。高校生が自力で答えにたどり着く必要があるのです。

大人側として参加した参加者に、実際に高校生と直接対話してみた感想を聞いた。この日は卒業を控えた高3の子と語り合い、参加者自身の経験を踏まえ「大学は、高校生や社会人には絶対にない自由な時間がたっぷりあるし、行動範囲も一気に広がる。海外放浪など、時間がないとできないことにぜひ没頭してみて!」とアドバイスしたそう。

また「時間がないことを言い訳に自分の可能性を封じ込めていたかもしれない、と高校生との対話を通して自分も内省できた。これからも仕事・プライベート問わず、目の前の物事に没頭することで新たなスキルや気付きを得たい」と感想を話してくれました。

大切な進路を決める高校生にとって、関わる大人を増やしておくことが、自分の将来の選択肢の視野を広げることにつながっていることは間違いありませんね。こちらも下野市のひとを想う、本質的で素敵なプロジェクトだと感じました。

いつでも戻ってきたい非日常・下野。あなたもこのまちの未来を担う一員になってみませんか。

今回は2日間のツアーで、下野市の魅力を感じたり、地域で取り組むまちづくりを実際に体験したりしてきました。

現状、下野市がまちづくりをおこなっていくうえで抱えている問題や足りない要素はまだまだ数多くあります。人手不足やスキル不足など、プロジェクトを遂行する中で不可欠なそれら問題を解決するうえで大切になってくるのは、やはり地域の外の人間です。

地域内外・年齢関係なく和気藹々と交流している様子

下野市は、まちづくりの一連の取り組みを「面白そう」とただ外部から見ているだけでなく、構想段階から内部のプレイヤーのひとりとして少しでも地域へ関わり、一緒にまちを作れる環境を整えようと考えています。そうすることで「外部の人間」だった人も地域に愛着を感じられるようになったり、より地域へ入り込むことが簡単になります。

私も実際に参加してみて、今回携わったプロジェクトが今後どのように進化していくのか、下野市にどのような未来をつくっていくのかがとても楽しみになりました。そしてその関わりは、この地域に引き続き関わっていこうと思える確かな理由になった気がしています。

地域のプレイヤーたちも日々試行錯誤していることが垣間見えた

「私の願いは、地域の可能性が無限であることです。なぜならば、この地域は私にとってかけがえのない場所だからです。」ツアー中に山口貴明さんが仰った言葉です。人はきっと誰しも、かけがえのない場所と呼べる場所を心に持っているはずです。

皆さんも都心から90分のおだやかで優しい下野市で、地域に根差したまちづくりをする一員になりませんか。きっと第二の故郷のような、忘れられないあたたかさがあなたを待っていますよ。

ライター:宇於崎(ウオザキ)
旅行をすることが好きで、地域活性やまちづくりに興味を持つ大学4年生です。普段はライターとして取材に出かけたり、旅行ベンチャー企業のインターン生として活動したりしています。

WEL Instagram(外部リンク)
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